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2009年06月02日更新
「日ロ関係、あせりは禁物」

吹浦  忠正

    
  ロシアのメドべージェフ大統領は5月29日、クレムリンで行われた河野雅治駐ロシア大使の信任状奉呈式で、「クリール(千島)諸島に対するロシアの主権を疑問視するような日本のパートナーの企ては受け入れられない」と述べ、日本側を強くけん制した。

  これに対し、麻生首相は翌30日、横浜市内で記者団の質問に答え、「ロシアによる北方領土の不法占拠が続いている」とした先の自らの発言にロシア側が反発していることについて、「日本の公式見解だから、わたしが改めて言ったからといって、ごちゃごちゃするようなことはない」と述べ、日露の平和条約締結交渉などに影響することはないとの認識を示した。

  これは実に正しい。

  北方4島のロシアの実効支配が不法占拠でないとするなら、ロシア側は明快な反論を公式に発表するがいい。

  7月のイタリア・マッダレーナでの主要国首脳会議(サミット)の際に行われる予定の日露首脳会談への影響に関しても、麻生首相は「私とメドべージェフ大統領との間で、話がこじれることはない」と語ったというが、このくらいの自信は当然だ。

  問題はその先、今のロシアの政治状況は、残念なことに、日本の正当な返還要求を受け入れる余裕はない。すなわち「機会の窓」は開かれていないのだ。

  返還交渉が本格化するのは、両国の政治が安定し、すぐれたリーダーの下で、ともに経済が良好で、両国関係がよく、国民の相互理解が相当に進むことによってもたらされる互恵関係が成立していることが必要条件である。

  また、周辺の国際環境の健全な形での安定も必要だ。

  しかし、今のロシアはタンデム(双頭)政権がいまいち不安定で、経済の根幹である石油の価格は大幅に下落し、通貨のルーブルもまたがくんと下がったままだ。

  石油・天然ガスに頼ってきた「ものづくり」は壊滅的な状況にある。

  このため、メイド・イン・ロシアの工業製品は、武器を除けばマトリョーシカ(組みこみ人形)くらいしか、国際市場では通用しない。

  故郷を失った人々(旧島民)や根室など経済的な不振が続く道東の人々には別途振興対策が図られるべきであるが、今の日本は、自分からカードを切る必要はない。

  7月の首脳会談でも、Show your cards, first.(あんたのカードを見せな!)でいい。

  間違えても、解散・総選挙を前に外交で点数を上げようとするあまり、無意味な(またはマイナスになるような)妥協案の提出は一切必要はない。

  日本は一貫して主張してきている、「四島返還」を貫くことで十分だ。それによって、日本が国際社会において法と正義を貫く信頼できる国であることを示すだけでいい。

  それ以外のことをしては、1993年10月の「東京宣言」で確立された、解決のための3原則をみずから放棄して、せっかく勝ち得た交渉の橋頭保を失うことになる。

  あわてるべからず。ロシア人より気長に、かつ真摯に天の時、地の利を待てばいい。


吹浦 忠正 : ユーラシア21研究所 理事長