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2011年08月12日更新
『日本とウラジオストク』
 ―安保研報告2011年7月号 巻頭言より―

吹浦  忠正

    
  「ウラジオストク・フォーラム2011」が9月27、28の両日、東京の日本財団ビルで開催されることが正式に決まった。これは、安全保障問題研究会(安保研)とユーラシア21研究所とがロシア沿海州 政府との協力により開催されるもので、昨年9月にウラジオストクで開催された会議についで通算2回目。事前に交換する論文と充実した討論を通じ、相互理解の推進に大いに役立つものと思われる。

  安保研では1996年以来、サハリン州行政府と通算10回にわたり「サハリン・フォーラム」を開催してきたが、諸般の事情で2009年以降、休止している。「ウラジオストク・フォーラム」は、極東地区との対話を促進しようという意図で、その後釜のように発足したもので、地域柄、極東情勢、とりわけ、 日本海、朝鮮半島、中国問題などにも力点を置いた内容になっている。

  いうまでもなくウラジオストクは約150年前からロシアの東の窓口となっている港湾都市で、太平洋艦隊の基地として発展してきた歴史を持つ。また、来年に予定されている「ASEAN首脳会議」を   前に、インフラ整備が急速に進められ、かつ、ロシアの中では格段に親日的な市民が多いところといえよう。

  ただ、日本とは富山、新潟、秋田など日本海沿岸の都市との文化交流がそれなりに続いているが、航空便1つをとっても、全く低調であり、このまちの発展は日本とどう付き合ってゆくかにかかっているといっても過言ではあるまい。

  今夏、そのウラジオストクを、東日本大震災で被災した岩手、宮城両県から33人(内、中学生が 32人)の生徒が訪問、日本海に面する青少年育成施設「オケアン」で8日間、合宿してロシアの   同世代の子供たちと交流する。日本側から参加するのは岩手県野田村立野田中学校、岩手県釜石市立釜石東中学校、宮城県石巻市立渡波中学校のいずれも吹奏楽部を中心とした一行。私が   理事長を務める社会福祉法人さぽうと21が震災で失った楽器を寄贈したことが縁で、外務省の依頼により、安保研ともども人選を進めさせていただき、ユーラシア21研究所の柴田良彦事務局長が  団長として、他の5人の引率者とともにウラジオストクに向う。

  このプロジェクト、3月21日、在モスクワ日本大使館を訪れ、東日本大地震の犠牲者の冥福を   祈ったときに、同夫人は、小雪の舞う中、日本大使館前に設けられた献花台に花束をささげて祈り、「すべての日本の人たちにお見舞いとお悔やみの言葉をささげます。力強さ、勇気、不屈の心で被害を乗り越えられるよう祈ります」と記帳した後、河野雅彦駐露大使夫妻と懇談し、「今回の災害に対してロシア国民の一人としてできるかぎりの支援をしたい。被災地の子供たちをロシアで休ませてあげたい」と申し出たことから始まったことで、G8首脳会議の機会に5月27日、フランスで行われた   菅・メドヴェージェフ首脳会談の「共同声明」にも「両国の共同事業」として明記されたものである。

  このように、対話と交流を積極的に進めることで、日露間の広範な理解と協力が進捗することを願いたい。

  安保研としては、おそらく来春、東京での開催になるであろう、1973年以来、通算29回目の    「日露専門家対話」で、従来どおり、ロシア側に、北方4島の返還の早期実現を迫るとともに、     それによる日露平和条約の締結を目指してゆくことに変わりはない。


吹浦 忠正 : ユーラシア21研究所理事長