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2012年10月19日更新
尖閣諸島を巡る課題に思う

吹浦  忠正

    
  尖閣諸島を巡る日中間のやりとりがかまびすしい。竹島を巡る韓国との関係もそうであるが、両国 ではこの11月、12月に政権トップの交代期を迎え、嫌が上でもナショナリズムを高揚させることで、政権の浮揚・支持率の下降防止を図っている面が明らかであり、弱体政権が続く日本は「いいように利用されている」というところであろう。

  そこで、私が思うのは果たして、日本政府がこの時期に尖閣諸島を国有化したことの判断が正し  かったかどうかということであり、かくなった上、今後、採るべき策は何であるかについてである。

  第一に、日本の領土であれば国有地だろうと、都有地だろうと、はたまた私有地であろうと、これを 管理し、守るのは政府の務めではないかということだ。いまや広く知られていることだが、ことの経緯は、地権者が山東昭子参議院議員を通じて石原慎太郎都知事に売買を働きかけたのが始まりで、 石原知事の呼びかけで10数億の募金が寄せられた。そこで国論がにわかに高まり、これを抑えようと、国が予備費を使って買い取ったのであった。政府にしてみれば、石原都知事に人気が集まり、 政府が無為無策であるかにように思われるのが嫌であり、国有化によって日本側の「騒ぎ」を鎮めようとしたのである。

  国が最初から地権者から買い取るという方針でなかったのは、予備費を使って購入するほかない という状況からも明らかである。それが石原知事に誘発・誘導されたということであり、一連の動きはせいぜい、日本国民の主権意識を目覚めさせたメリットくらいしか、プラスはない。むしろ、石原知事は主権者にまんまと乗っけられたという面なしとしないのではあるまいか。主権者にあっては、地権を国に寄付し、知事は善意の募金を贈るという解決を図るべきではなかったか。

  国との領土からみの話に、無用な波を立てたのは日本政府に一因がある。「所有者が誰であろうと、政府は従来どおり、借地する所存である、万一、借地できないということがあっても、日本の領土として防衛に当たることには変わりない」とでも官房長官が発言しておけば済んだ話であり、税金のとんだ無駄遣いである。

  第二に、国有地になったからには、それなりの積極的な保守・管理・維持をすべきは当然である。 そこで私はとりあえずは、貴重な環境下にある尖閣諸島を、この際、是非、国際的な調査団によってその実態を調査・研究してほしいのである。アホウドリがいまや鳥島と尖閣諸島にしか自然にはいないとされているなど、尖閣モグラをはじめとするいくつかの貴重な動植物がいるとされている。その実態を、国際的な専門家チームを編成し、定期的に調査してほしいのだ。

  この調査チームには場合によっては日本人の専門家がいなくてもいい。中国人の専門家が加わってもいい。日本の査証を取得した各国の専門家が、日本政府の便宜の提供により、現地において  調査・研究にあたってほしいのだ。

  また、海洋国家日本の「特別モデル地区」とし、漁業の活性化、地図の作成、動植物の分布、港湾の整備など諸政策の実施による管理と整備の強化が行われてこそ、遅まきながら今回の国有化が 意味を持ってくるのである。

  第三に、米軍が射爆場として使用してきた様子を、おそらく存在しているであろう映像で広く報道してほしいということだ。中国が尖閣諸島を自国の領土だと言い張るなら、なぜ、米軍の空爆演習に抗議をして来なかったのか、これこそ、中国が尖閣諸島を日本(または琉球政府)の領土であると認めて いたか、無主の地としてきた証拠ではないか。

  第四に、北方領土の地権者との関係である。北方領土は尖閣諸島の1,000倍、竹島の2万倍もの面積であり、そこには8,300余筆に分かれた地権者がいる。尖閣諸島を国有化するなら、これもまた早急に国が買い上げておくべきである。さもないと、いざ返還となったとき、現に居住しているロシア人と不動産上のトラブルが無数に起こってしまう。 現に、1968年に小笠原諸島が復帰したとき、 既に帰島していた欧米系旧島民と血統的日本人の帰島者との間で、土地をめぐる多数のトラブルが発生し、解決を見たのは90年代であったことを想起すべきである。それなくして、返還時に、現に居住しているロシア人は、希望すれば日本に残留できるといっても、所詮、画餅に過ぎまい。

  領土を巡る対策については、周知を結集して、静かに努力と工夫と忍耐を厭うべきではない。


吹浦 忠正 : ユーラシア21研究所理事長