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2009年02月05日更新
  日露関係の現状についての見解
    ―2009年「北方領土の日」にあたり―
    領土問題 姿勢がぶれないことこそ肝要


  近年、ロシアの周辺では、NATOの東方拡大、東欧へのMD(ミサイル防衛)配備の進展、CIS諸国でのあいつぐ政変が続いた。そうした中で、ロシアは経済力の回復もあって、大国としての意識を取り戻し、過剰ともいうべき自信を持ち始めていた。このため、対外的には強気の外交姿勢で臨む場面が多々あった。しかし、2008年、グルジアでの武力衝突、世界的な金融危機、原油価格の急落が起こり、今や国際政治・経済の枠組みが大きく揺れ動き、ロシアもまたその苦悩のただなかにある。

  日露関係を考える上で、私たちは、基本的に「発展させるべき側面」と「譲ってはならない側面」とがあると認識している。そして、経済、文化、人的、学術的交流など「発展させるべき側面」は平和条約問題を念頭に置きつつも、互恵の原則に基づいて積極的に発展させ、同時に、日本は主権国家としてロシアに対して「譲ってはならない側面」については、安易な妥協を図るべきではなく、きちんと主張し続けなくてはならないと考える。

  「譲ってはならない側面」は北方領土問題についてである。あらゆる機会を通じ、その祖国復帰を願う各界各層が誠心誠意、明確に返還要求の意志を伝える必要がある。この2つの側面は対立するものではなく、むしろその有機的な結びつきを図ることにより、念願とする「北方4島の復帰を実現しての日露平和条約の締結」が実現するものと考える。

  他面、実際の四島住民との関係については、「ビザなし」交流が継続し、北方領土在住ロシア人の日本語学習者は増え、訪問先各地での交流を通じての相互理解は少しずつ進んでいる。

  ただ、それであっても、北方領土問題を巡っては、遺憾ながら、両国間で近年、確たる顕著な進展はみられていない。これは両国で政治の最高首脳が交代するという時期であったことや、他の緊急に取り組むべき課題が多かったこと、ロシアの態度の硬化などにもよろうが、結果として、まことに残念なことである。

  この間、わが国の一部に、不必要な悲観論や問題の本質を理解しない安易な妥協論が出始め、これがロシア側に誤解を与ええかねないメッセージとなってきた面があることも、関係停滞の大きな原因となっている。

  勿論、4島返還を求める世論が大きく後退するといった傾向はない。しかし、北方領土返還をめぐるわが国の世論の動向には、昨年11月発表の内閣府政府広報室調査結果に見るように、一見、関心の冷却と解釈される現象がある。私たちは、その原因の大半が、この問題での近年の政府による不退転の決意表明の弱さ、および国民説得の姿勢の後退にあると考える。ゆえに、民間にあって私たちがなすべきは一面において政府、政治家たちを督励し、他面において、民間組織でありながら自らロシア説得の努力を続けることである。

  私たちは、北方4島の返還が日露関係の抜本的な改善に直結するものであるという考えに立ち、これまで長らく対露(ソ)対話を行なってきた。文化や学術などの分野をはじめ、日露間の相互理解の促進を図り、それを基礎にしてこそ、領土問題の解決があると確信するからである。これからも、会議、対話集会、ロシア語による書籍やホームページの活用など、さまざまな手段を用い、あらゆる機会にロシア側を説得してゆく所存である。

  ロシアに対して、日本側が説得すべき今ひとつは、「北方4島の返還要求」というのは、我が国が外交的に既に大きな妥協をしており、いわゆる「正札」外交を行っているということである。したがって、日本としては、「4島ではなく2島」だとか「4島を等面積で分割する」だとか、「共同統治」といった話はない。この点の認識は日本国内に向けて徹底が図られなければならない。北方四島不法占拠の経緯を冷静に見れば、これは国家の尊厳そのものにかかわる問題であることが明白だからである。

  ゆえに、国内に向けて私たちが強調したいのは次の点である。すなわち両国は、この問題を「歴史的法的事実に立脚し、両国の間で合意の上作成した諸文書及び法と正義の原則を基礎として解決する」ことで一致している(『東京宣言』)。昨今の思い付きとも言うべき諸案は、自らこの3原則を放棄することであり、到底認められない

  ただし、私たちは4島の返還の実現にあたって、相互に納得できる状況づくりに知恵を絞ることも必要であると考える。特に、北方領土問題の解決が日露両国にもたらす大きなプラスについて、ロシア側に強く認識させる必要がある。

  ロシアは冒頭述べたような国際環境の中にあり、早晩、必ずやわが国を軽視し得ない情況が迫ってくるに違いない。また、ここ2,3年来の欧米諸国との政治的、外交的、軍事的な関係の冷え込み、および中国との微妙な関係もあって、日本を重視しようとする姿勢を強めつつある。

  日露両国は、グルジアでの武力衝突発生にも拘わらず、昨年秋には防衛交流の継続も行なっている。こうした交流の分野では日露関係はさらに拡大してしかるべきである。

  経済的には日露両国は、相互に補完しあえる大きな発展の可能性を持っている。すなわち、日本は投資、貿易、エネルギーなど経済面での対露関係を強めつつある。旧臘、サハリンからの原油搬送タンカーの第1号が日本に入ったことは、両国関係のさらなる発展の一歩といえよう。他方、ロシアはエネルギー輸出国から脱するため、ロシア産業における省エネの促進、品質と能率の向上、製品管理、極東その他ウラル以東における人口減少に歯止めをかけるべき雇用機会の創出、シベリア鉄道をはじめとする国内輸送網の近代化・・・こうした課題解決のために、日本の最新の産業技術や投資市場に大いに関心を抱いている。しかし、両国の真の提携によってこうした諸課題の解決にあたるには、商業的な算盤勘定の観点だけからでは、到底、実現し得ないことも明らかである。

  日露両国が領土問題を解決して恒久的平和条約を締結し、「血が生き生きと通う」真の善隣友好協力関係が達成された場合にのみ、たとえ自国の経済がさまざまな苦難に直面していようとも、日本側が互恵の原則に基づき積極的に乗り出すべきことであり、乗り出し得ることである。

  2009年を迎え、ロシア第一の実力者であるプーチン首相の来日が近い。その率いるロシアもまた世界に孤立して存立できる状況ではない。客観情勢は大局的に、日本側に決して不利に展開してはいない。

  また、日本側の4島返還を求める世論は揺らいではならないし、一層、大きくしてゆく必要がある。

  日本国民は、いまこそ初志貫徹の重要さを再認識し、北方領土返還実現に向けて、あげて、政府首脳や交渉の任に当たる当事者を叱咤激励すべきである。世論の強い後押しこそ、ロシアを最終的に説得する大きな要因であることを強調したい。


2009年02月07日
佐瀬昌盛(安全保障問題研究会会長)
吹浦忠正(ユーラシア21研究所理事長)


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